深夜や休日に、突然トイレの水が止まらない、床が濡れている…。そんな予期せぬトラブルに見舞われると、本当に焦りますよね。「この変な形の部品は何?」「どこが原因で水が漏れているの?」と、タンクの中を覗き込んでも、構造が分からず途方に暮れてしまう方も少なくありません。
ご安心ください。トイレの構造は一見複雑に見えますが、各部品の名称とその役割さえ理解すれば、多くのトラブルは原因を特定できます。
この記事では、水道修理のプロである「水まる」が、ご家庭で最も多いタンク式トイレ(特にTOTO製品を想定)をモデルに、各部品の名称と役割を、イメージしながら分かりやすく解説します。この記事を読めば、ご自身でトラブルの原因を突き止め、簡単な修理であれば費用を抑えて解決できるようになります。

※もし便器から水が溢れそうな「つまり」の症状でお困りの場合は、まずはこちらの記事をご覧ください。
トイレつまりの基本的な直し方はこちら

まずは全体像を把握!トイレの基本構造と各部の名称

トイレのトラブルを理解するには、まず全体の構造を知ることが近道です。洋式トイレは、大きく分けて3つの主要なパーツで構成されています。

  1. タンク:洗浄用の水を溜めておく部分です。水漏れや水が溜まらないといったトラブルの多くは、このタンク内部の部品が原因です。
  2. 便器本体:用を足す部分で、陶器でできています。内部には、下水からの臭いを防ぐための「封水(ふうすい)」が溜まっています。
  3. 給排水管:壁や床からタンクへ水を供給する「給水管」と、便器から汚水を下水へ流す「排水管」があります。

まずはこの3つの位置関係を頭に入れておくだけで、どこで問題が起きているのかを切り分けやすくなります。

水漏れ・故障の最重要エリア!トイレタンク内部品の名称と役割

トイレトラブルの原因究明で最も重要なのが、このタンクの内部です。まずはタンクのフタを開けて中を覗いてみましょう。フタは陶器でできており、重くて割れやすいので、必ず両手でゆっくりと持ち上げてください。

  • 手洗い管付きの場合:フタの裏側で、手洗い管とタンク内部の部品が給水ホースで繋がっています。ホースのナットを反時計回りに回して外してから、フタを持ち上げましょう。
  • 手洗い管なしの場合:多くは真上に持ち上げるだけで外せます。

フタを開けると、いくつかの部品が組み合わさっているのが見えます。これから、それぞれの部品名と役割、そして故障した際に現れる症状を、一つひとつ詳しく解説していきます。

ボールタップ(給水弁):タンクの水位を制御する司令塔

  • どこにある?:タンクの側面、給水管が接続されている側の、上部にあります。
  • 役割:タンク内の水位が下がると給水し、一定の水位に達すると水を止める、非常に重要な部品です。「浮き球」という部品と連動して動きます。
  • ここが壊れると起きる症状
    • いつまでも給水が止まらず、水が便器へ流れ続ける。
    • タンク内に水がまったく溜まらない、または溜まるのが極端に遅い。
    • 給水時に「ブーン」「カン」といった異音がする。
  • 自分でできる確認/応急
    浮き球が他の部品に引っかかっていないか確認します。また、内部にある「ダイヤフラム」というパッキンが劣化すると、不具合が起きやすくなります。寿命は約7〜10年です。

浮き球(フロート):水位を感知するセンサー

  • どこにある?:ボールタップの先に、アームで繋がっているプラスチック製の中空の球体(またはカップ状の部品)です。
  • 役割:タンク内の水面に浮き、水位をボールタップに伝えるセンサーの役割を果たします。水位が下がると浮き球も下がり、ボールタップの弁が開いて給水が始まります。水位が上がると浮き球も上がり、弁が閉じて給水が止まります。
  • ここが壊れると起きる症状
    • 浮き球が他の部品に引っかかり動かなくなると、給水が止まらない、または給水されない。
    • 浮き球が破損して内部に水が入ると、うまく浮かずに水位を正常に感知できなくなり、水が溢れる原因になる。
  • 自分でできる確認/応急
    手で軽く上下に動かしてみて、スムーズに動くか、何かに引っかかっていないかを確認しましょう。

フロートバルブ(ゴムフロート):タンクの「栓」の役割

  • どこにある?:タンクの底、中央にある排水口を塞いでいる、ゴム製の部品です。洗浄レバーとチェーンで繋がっています。
  • 役割:タンクの排水口に栓をして、水が便器に流れないようにする、重要な部品です。レバーを引くと、この栓が持ち上がって水が便器に一気に流れます。
  • ここが壊れると起きる症状
    • 便器内に水がチョロチョロと流れ続ける原因のNo.1です。
    • ゴムが劣化して硬くなったり、変形したり、ゴミが挟まったりすると、栓が完全に閉まらなくなり、隙間から水が漏れ続けます。
  • 自分でできる確認/応急
    チェーンが絡まったり、長すぎたり短すぎたりしても正常に作動しません。指で触ってみて、ゴムが劣化して黒いインクのようなものが付着する場合は、交換時期のサインです。寿命は約7〜10年です。より詳しい原因はトイレタンクの水漏れ原因と修理の考え方でも解説しています。

オーバーフロー管:タンクからの溢水を防ぐ安全装置

  • どこにある?:タンクのほぼ中央に立っている、太い筒状のパイプです。フロートバルブがはまっている排水口と一体になっています。
  • 役割:万が一、ボールタップや浮き球が故障して給水が止まらなくなった際に、タンクから水が溢れ出るのを防ぐための安全装置です。溢れた水はこの管を通って便器内に直接排出されます。
  • ここが壊れると起きる症状
    • この管にヒビが入ったり、根元から折れたりすると、溜まるはずの水がそこから便器へ直接流れ出てしまい、タンクに水が溜まらなくなります。
  • 自分でできる確認/応急
    管の側面に「-WL-(Water Line)」という刻印や線があれば、それがタンクの標準水位を示しています。水位がこれより著しく高い場合、ボールタップの異常が考えられます。

洗浄レバーとチェーン:水を流すための操作部

  • どこにある?:タンクの外側にあるハンドル部分と、タンク内でフロートバルブを繋いでいる金属またはプラスチックの鎖です。
  • 役割:レバーを操作することでチェーンがフロートバルブを引っ張り上げ、水を流すという一連の動作の起点です。
  • ここが壊れると起きる症状
    • チェーンが切れる、外れる:「大」「小」のレバーを操作しても手応えがなく、水が流れない。
    • チェーンが絡まる、長すぎる:フロートバルブがしっかり閉まらず、水がチョロチョロと漏れ続ける。
  • 自分でできる確認/応急
    フタを開けて、チェーンが正常に繋がっているか、絡まっていないかを確認しましょう。たるみは指が1〜2本入る程度が適切です。

便器・排水まわりの部品名と役割|悪臭や床への水漏れ原因

次に、トラブルが起きると被害が大きくなりやすい、便器や床まわりの部品を見ていきましょう。床が濡れている、下水のような臭いがするといった場合は、これらの部品が原因かもしれません。

便器と封水(ふうすい):悪臭と害虫を防ぐ水のバリア

  • どこにある?:便器の底に溜まっている水のことです。
  • 役割:便器内部はS字状にカーブしており、このカーブに水が溜まることで、下水管からの悪臭や害虫が室内に上がってくるのを防ぐ「フタ」としての役割を果たしています。これを「封水」と呼びます。
  • ここが壊れると起きる症状
    • 封水が何らかの原因でなくなると(封水切れ)、下水の臭いが上がってくる。
    • 一度に大量のトイレットペーパーを流すと、このS字カーブで詰まりやすくなる。

床フランジとワックスリング:便器と排水管を繋ぐ重要部品

  • どこにある?:便器と床の接合部、普段は見えない床下にあります。
  • 役割:「床フランジ」は、便器を床に固定し、排水管と接続するための部品です。「ワックスリング」は、床フランジと便器の間に挟む粘土状のパッキンで、排水が漏れたり、臭いが漏れたりするのを防ぐ、非常に重要な役割を担っています。
  • ここが壊れると起きる症状
    • ワックスリングが経年劣化すると、便器の根元からじわじわと水が滲み出てくる、床が濡れるといった症状が出ます。
    • 床フランジの固定が緩むと便器がぐらつき、ワックスリングの密閉性が失われて水漏れや悪臭の原因になります。
  • 自分でできる確認/応急
    この部分の修理は便器を一度取り外す必要があり、DIYの難易度は非常に高いです。便器の根元からの水漏れは、トイレの床が濡れる原因と対処法を参考にしつつ、早めに専門業者へ相談することをお勧めします。

【症状別】トラブル原因の特定ガイド!この部品をチェックしよう

さて、部品の名称と役割が分かったところで、今あなたがお困りの症状から、その原因を特定していきましょう。以下のリストを上から順に確認してみてください。

ケース1:便器内に水がチョロチョロ流れ続け、水が止まらない

  1. フロートバルブの劣化・ズレを確認:タンクの底にあるゴム栓(フロートバルブ)に触れてみてください。手が黒くなるなら劣化のサインです。ゴミが挟まっていないか、チェーンが絡まっていないかも確認しましょう。
  2. オーバーフロー管の水位を確認:「-WL-」の線より水位が高いですか?もし水が管の上から溢れているなら、次のボールタップの異常を疑います。
  3. ボールタップ・浮き球の動作を確認:浮き球が他の部品に引っかかっていませんか?手で持ち上げてみて、給水が止まるか確認してください。止まらない場合はボールタップ本体の故障の可能性が高いです。

ケース2:タンクに水が溜まらない、または溜まるのが遅い

  1. 止水栓が開いているか確認:まず、壁や床から出ている給水管の途中にある止水栓が、閉まっていないかどうかを確認します。マイナスドライバーで反時計回りに回すと開きます。
  2. 給水管のフィルター詰まりを確認:止水栓を閉めた後、タンク側の給水管接続ナットを外すと、中にフィルター(網)があります。ここにゴミが詰まっていると水の出が悪くなります。
  3. ボールタップ・浮き球の固着を確認:浮き球が下がった位置で固着していないか、手で動かして確認します。それでも給水されない場合、ボールタップの故障が考えられます。
  4. オーバーフロー管の破損を確認:管にヒビが入っていないか目視で確認してください。ヒビから水が漏れていると、いつまで経っても水は溜まりません。
    また、水は溜まるけどトイレの流れが悪い原因と対処法でお悩みの場合や、トイレがゴポゴポ鳴って流れない原因を探している場合は、排水側に問題があるかもしれません。

DIYで部品交換する前に|必要な道具と止水栓の閉め方

原因を特定でき、自分で部品交換に挑戦してみたいという方へ。作業を始める前に、必ず以下の準備と安全手順を守ってください。

  1. 止水栓を閉める
    壁や床にある止水栓の溝にマイナスドライバーを当て、時計回りに、回らなくなるまでしっかりと閉めます。この時、何回転させたか覚えておくと、作業後に元の水量に戻すのが簡単です。
  2. タンクの水を空にする
    止水栓を閉めた後、洗浄レバーを引いてタンク内の水をすべて流し切ります。
  3. 道具と準備
    • 交換用部品(TOTOの品番などを確認し、適合するものを購入)
    • マイナスドライバー、モンキーレンチ
    • 雑巾、バケツ(床が濡れるのに備えて)
    • スマホ(分解前に写真を撮っておくと、元に戻す時に役立ちます)
  4. 安全注意
    • 温水洗浄便座(ウォシュレットなど)が付いている場合、必ず電源プラグをコンセントから抜いてください。感電の危険があります。
    • ナットなどを締め付ける際は、力任せに締めすぎないでください。部品の破損や、新たな水漏れの原因になります。

自分で直せない時はプロに相談!信頼できる業者の見極め方

「部品を特定できなかった」「自分で作業するのは不安」「便器を外すなど、難易度が高い作業が必要な場合」…そんな時は、決して無理をせずプロの水道修理業者に相談しましょう。特に集合住宅の場合、水漏れを悪化させると階下への被害に繋がりかねません。

信頼できる業者を選ぶポイントは3つです。

  • 水道局指定業者であること:自治体から技術力や信頼性を認められた証です。
  • 料金体系が明確であること:作業前に必ず見積もりを提示し、内容を説明してくれる業者を選びましょう。
  • 実績と評判:実際に利用した人の口コミなどを参考にしましょう。

私たち「水まる」は、各地域の水道局から認定を受けた指定工事店です。作業前のお見積もりは無料で、ご納得いただいてから作業を開始するため、後から不当な追加料金が発生することはありませんのでご安心ください。

【実例紹介】水まるの修理実績と料金の目安

「プロに頼むといくらかかるの?」という不安を解消するため、実際の修理事例の一部をご紹介します。

  • 浴室蛇口の水漏れを24時間即日対応で解決(横浜市)
    料金:52,000円 / 作業時間:1時間
  • 給水管漏水を即日修繕(横浜市)
    料金:60,800円 / 作業時間:1時間30分
  • 便器脱着もお任せトイレ専門修理(千葉市)
    料金:61,900円 / 作業時間:1時間40分
  • 排水が流れない緊急対応 高圧洗浄で解決(岸和田市)
    料金:68,000円 / 作業時間:40分

「水まる」は、Googleクチコミでも多くのお客様から高評価をいただいており、「説明が丁寧で安心できた」「対応が迅速だった」とのお声を多数頂戴しております。トイレのことでお困りの際は、24時間365日いつでもお気軽にご相談ください。

まとめ:トイレ部品の役割を理解して、突然のトラブルに備えよう

今回は、トイレの部品名称とそれぞれの役割、そしてトラブルが起きた際の確認方法について詳しく解説しました。

  • トイレの構造は「タンク」「便器」「給排水管」の3つ。
  • 水漏れ・給水不良の多くは「タンク内部品(ボールタップ、フロートバルブ等)」が原因。
  • 床の水漏れ・悪臭は「床下の部品(ワックスリング等)」の劣化が考えられる。
  • DIYの基本は「止水栓を閉める」ことから。無理は禁物。
  • 不安な時は信頼できるプロ(水道局指定業者)に相談する。

各部品の役割を知っておくだけで、いざという時に落ち着いて原因を特定し、適切な対処ができるようになります。多くのタンク内部品の寿命は、約7〜10年です。この記事を参考に、ご自宅のトイレを一度点検してみてはいかがでしょうか。